◎ サイボーグジャガー ’Japan ’《仮》
(1976年タカラ)



 Japanは仮称。76年に店頭に出たサイボーグジャガーです。モントリオールオリンピック開催ごろ、各店1箱ずつ入荷していたアイテムです。ヤフオク入手。ただ、塗装の状態が非常に悪いです。ほぼこれで間違ってない筈ですが、入手品にはしっぽが無かったので、ノーマルジャガーのしっぽを付けています。しっぽも塗られてるかもしれないのですが、元々筆塗りっぽいので、レプリカの可能性もあります。実は某誌で過去紹介されているアイテムです。
 で、顔はヤフオクの写真では全くわからなかったのですが、左の写真のような感じです。


 76年、このアイテムが出た当時は丁度世の中はモントリオールオリンピック一色。モントリオールと言えば自分も大好きなナディア・コマネチや、体操日本やバレーボールに沸き立っていた、あのオリンピックなので記憶にある方多いと思います。で、小学生の自分が住んでた北浦和でも、町のあちこち商店街に日の丸がかけられたり、紅白まんじゅうが売られたりしてたような感じでした。東京オリンピック以来、オリンピックといえば日の丸、ってブームがまだ続いてる時代だったわけです。
 自分はこのジャガーをその頃、北浦和商店街の店で見た事があるわけですが、最初店のショーウインドーの中に飾られていたのを見た時に自分は結構怖かったのを覚えてます。赤く発熱した素体をもっと良く見ようと、覗き込んだボックスの中のジャガーの口は、赤く染まっているように見えたからです。しっぽがどんなだったかは覚えてません。すいません。

 このジャガーがこの色で店に置かれる事になった理由はいくつかあると思います。
 マニアなら知っての通り、タカラはGIジョー正義の味方の発売と同時期に冬季オリンピック開催にあやかって、スキーヤーコスチュームのGIジョー等を出しています。前年等にはスポーツシリーズとして柔道、野球、レスリング、ボクシング等も出しています。それらの前例から何か記念品を作ろうという事になったのだと思います。
 が、当時既にタカラはGIジョーの販売をストップしています。既にサイボーグとミクロマンやリカちゃんたちが主力。しかも五輪マークはオリンピックのパテントが必要だし。で、当時の日の丸ブームにあやかって・・・だと思います。


 ボディは警察犬競技や競馬等の、サポーターやゼッケンを装備したような姿にも見えるし、 白のそれらは非常にスポーティーです。首は写真通り赤で、ソフビヘッドには赤いスミ入れがされているわけですが、実は筆で簡単に入れたようなスミ入れではなくて、どちらかというとSIC魂等のスミ入れの手法に近いです。アゴの下や後頭部に出来てる気泡の中にまで塗料が入りこんでます。アマチュアはこういう塗り方は多分しません。なので、多分頭は本物の可能性がある。でも身体は?・・・日の丸モチーフなら、赤は一点なので、しっぽはノーマルだと思うのですが。
 
 日の丸もしくは紅白をモチーフとした品物を作るなら、ジャガー以外にもアイテムはありそうです。でも、結局ジャガーに白羽の矢が立ったのは、ジャガーが一番「野生的」なイメージが強いのと、「ジャングル大帝」の主人公の白いライオン「レオ」の父の、「パンジャ」の名前が「ジャパン」から来ていたのを開発スタッフが伺って知っていたからではないかと思います。サイボーグカタログには手塚氏の推薦文も載っている位だし。アニメやコミック界で最も有名な4足動物は当時やっぱりレオだったし、白いライオンと言えば「怪傑ライオン丸」の変身セットもタカラは発売しています。それでタカラも、白を基調にしたこのアイテムを作ったのだと思います。
 そんなわけで、今回は仮称を’Japan’にしてみました。

 カラーリング的に目立つのは白と赤なのですが、丁度肩の部分は塗られていないので、「コンドルバイオレンス」の超獣セットを装着すると、丁度全身が赤と白に納まるという感じなんですよね。実は過去某誌で紹介されていた時は、ロボットマンカラーのジャガーとして紹介されていました。ビクトリー計画でロボットマンとからませた時に合うような色にされていると紹介されていました。実際、赤と白と銀と透明色は、ロボットマンの色から青を抜いた色とも言えます。
 また、当時は丁度「鋼鉄ジーグ」のアニメが放送されていて、パーンサロイドの玩具の売れ行きも良かったようなので、白いカラーで塗られた可能性もありですね。
 
 で、このアイテムがレプリカか本物かという事なのですが・・・難しいですねー;(下に続く)



 素体を下から見るとこんな感じです。塗装面自体は筆塗りのため非常に粗いのですが、ボディの白と透明をわける側面ラインはマスキングされたように非常にきれいです。ですが白は組まれた後から塗られています。素体のひじはラチェット式の初期関節です。
 従って、実はこのアイテムも3で紹介したアルビノ超人のように、返品分の再出荷版である可能性が高いです。考えられる返品の可能性は、マスクの退色かもしくは、箱の中のブリスターの圧力で首を折ってしまう、あれです。
 サイボーグアイテムはウインドーパッケージなので、ジャガーの首が経年(運悪く数ヶ月でも)自然クラックでヒビが発生した場合買い手に判ってしまう。また、箱の中でも直射日光やソフビ自体の材質のせいで、ヘッドの色は退色します。退色したら売れないから、店としては、返品って事になってしまう。
 で、丁度頭部はオレンジ色になっているわけです、丁度今のミクロマンにも使われてるラバーカラーに(溶岩。というかゴム=ラバーでラバーカラーってのは洒落ですか?)。それを生かしてこういうリペイントをしたのだと考えれば、天才的と言えます。それでも透明プラに白をいきなり塗るのは難しいわけで・・・。筆塗りって今は敬遠されてるけど、当時のミニソフビなんかはまだ筆塗りは多いです。当時のサイボーグ系スーツの塗装も筆塗りされてる部分はある。でも、僕が今回買ったジャガーが本物かどうかはわかりません。


 最近はなんか、発売する前から「リペイント版」が出る事が前提みたいなアイテムが限りなく存在しているわけですが、本来海外玩具等で言うリペイントっていうのは、返品されてきたアイテムをなんとかまた売るために再塗装した、文字通り「塗りなおし」の事を指すわけで。ただ、こういうのって玩具会社としてはあまり嬉しい事ではないだろうから、当然記録にも殆ど残らなかった可能性はあります。何よりタカラの佐藤社長は「品物が品ぎれなのに宣伝するのは罪悪だ」という位の良識ある方なので、1店舗に一つしか入らないようなアイテムは当然宣伝なんてしなかっただろうと思います。

 で、顔がこのように塗られた理由ですが、実はここの2や2.5で紹介したように、アンドロイドAや宇宙人はヘッドの目などをワンポイント塗装されているので、このアイテムもそれに合わせた可能性があります。信じる人は少ないと思うので、もう少し書くと(別に信じてもらえなくてもいいんですが)、1号の変身セットは75年に販売されたラストアイテムでその歴史を閉じていて、超人セットや超獣セット、怪人セット等のソフビ系アイテムも当然、もう既に販売が終了してしまってます。それらの塗装をしていた方々は、リカちゃん等の担当になったんでしょうが、とにかくそれまでフル稼動だった塗装担当の方々がいる筈で、その分これらの「塗り」で成立するリペイントアイテムや塗装テクを要する限定品(3.2のような)が生まれたんじゃないか?ってのが自分の考えです。ミクロマンはインジェクション成型色中心だし。

 もしかしたらこれは販売用の品では無かったのかもしれないんですよね。「ビクトリー計画」のテコ入れ用の小売店アイテムで、店頭展示のみの予定で、小売店に品物が回った後は、販売も展示も’お店の自由’にしていいよ、にしていた可能性もある。塗装見本用とか。それなら塗装の個体差が多少あっても全然問題ないだろうし。もより店では売られてたわけだけど。ビクトリー計画にからめた販促物だとすれば、実際の店への配布はもっと早い時期だった可能性もあります。
 初期の「ゴールドミクロマン」も実はプレゼント分と「小売店の展示品」として流通していたようです(90年「宇宙船」記事より)。実際に初期のゴールドミクロマンは塗装が非常にはがれやすいらしい。
 76年には他にも小売店頭では色々なキャンペーンがあったりもしました。ミクロマン系は結構みんなに記憶されているんだけども。


 後のサンライズアニメ「鎧伝サムライトルーパー」には白炎王という白虎が登場し、ジャガーをクリアブラックにした玩具がタカラから発売されたのですが、このジャガー、白炎王に印象がかなり似ています。玩具サイドがプロトタイプのイメージとして、旧ジャガーを提示したのは間違いないですが。でも白炎王も、ギアを付けると全身が黒く染まるのが不思議でカッコいいです。・・・まだ持ってないので欲しいです >白炎王


 小学生の頃は「怖いアイテムだと思った」と書いたけど、実は一種、その赤と白のカラーに、まるで法王の衣装のような神々しさも感じたりもしました。オリンピックって神々にまつわるイベントだしね。このアイテムが店頭で売られてたのを見たのは、モントリオールオリンピックの終わった直後の1〜2週間の頃です。おもちゃ屋さんを出ながら「オリンピック終わっちゃって寂しいな・・・」という事等々を、なんとなく思ったりもしたので。


 ↑ロボットマンとの合体。並べるとこんな感じです。
 (実はMego製マイクロノーツのバイオトロン)

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